<For two years>
「亜稀斗〜」
「おっはよ、ちゃんvv」
毎日の挨拶。
クラスの中でも特別仲の良い2人は朝も休み時間も放課後も時間が有れば必ず2人一緒に居る。
そして楽しそうに話をする。
「相変わらず凄いね、ウチのクラス…」
「うん…」
当たり前といえば当たり前の事である。
「テニス部がいるしね」
そう。
男子テニス部正レギュラーが3人もいるクラスなのだから。
「跡部君に〜、忍足君に〜、芥川君」
「アレだけの面子ならねぇ」
話題は必然的にテニス部の話になった。
競争率の高いクラスな為、他のクラスから女子が集まる。
必死に跡部、忍足、芥川を見ようとしている。
「はぁ…」
「?どーしたの?ちゃん」
ファンの子を見てると大きな溜息を吐く。
椅子に座り机に突っ伏すを見て亜稀斗が声を掛ける。
「だぁ〜ってさぁ…あーんな人気のある人達と同じクラスになったのに、2年間1度も話した事無いんだよ?」
氷帝は3年間クラス替えがない。
だから、跡部、芥川とは3年間一緒だと言うのに未だ1度も話した事がないのだ。
忍足は2年の時に転校して来た為2年から同じクラスだが勿論忍足とも話したことは無い。
「はぁ…彼氏欲しぃ」
「告られてんのに断るからでしょ」
一際目立つ2人ではないが可愛い。
亜稀斗には彼氏はいる。
は断ってしまう。
断る割りには『彼氏が欲しい』と亜稀斗に愚痴を零す。
「んーつか、好きな人っての?欲しいな」
「あー其れ解る!何か恋したいって言うの?」
完全に女の子同士の会話に盛り上がって来た。
そんな話をしてる時だけ凄く楽しそうに話をしている。
「なぁ、跡部」
「あぁ?くだらねぇ事言ったらぶっ飛ばすぞ」
テニス部の部室で忍足と跡部が話をしている。
ファンが五月蝿いので本鈴がなるまでの暇つぶしに何時もいるのだ。
芥川も居るのだが彼は例の如く夢の世界へ…。
「そないな事言わんといて」
「…」
芥川が寝てる分には忍足にとって好都合。
「俺な気に入ってる子がおんねん」
実はと言って跡部にこっそりと教える。
「…珍しいな」
忍足の好みは統一性が無い。
が、必ず顔は美人を選ぶ。
可愛い系の女の子を気に入るのは珍しい。
「…侑ちゃん好きなの?」
目を擦りながら芥川が話しに参加して来た。
「可愛E子だよね〜、何時も笑ってるC」
芥川も評価する。
それからすぐに噂が流れた。
あの会話をファンの子が聞いていたんだろう。
あっと言う間に尾鰭やら背鰭やらが付いてしまい、収集も付かない事に。
唯一の救いは忍足の気に入ってる子の名前が知れ渡らなかった事。
もし知れ渡ったらファンの子が何をするか…。
そして何より本人に知られてしまっては元も子もないのだから。
「ねぇちゃん」
「何?」
噂が好きなのはこの2人も同じ。
…と言うか、女の子は全般で噂好きなのです。
「忍足君の好きな人って誰だろうね」
人一倍噂好きな亜稀斗は目を輝かせて楽しそうだ。
「誰だろうね〜」
が興味なさそうに答える。
亜稀斗は怒ったふりをして尋ねる。
「ちゃんは気にならないの?!」
氷帝の天才と跡部が呼ぶくらいの人だ。
「気にならなくは無いけど…」
曖昧に答えるに亜稀斗は最新の情報だと言って、つい先程入手して来たばかりの情報をに教えた。
「…其れ本当なの?」
全く相手にされなかったが亜稀斗の噂は確かに一般に回ってる情報より詳しかった。
『好きな子の事を良く見てる』
『全く話した事が無い』
今まで回っていた噂の内容。
亜稀斗の情報は其れプラス@だった。
『クラスの子で可愛い感じの子』
其れだけだったが、情報を入手出来そうにない男子テニス部の情報。
此れだけ集まれば十分である。
此処まで集まれば残るは探究心が事を進める。
話した事が無くても他の人の噂を足して行けば答えは近くなる。
と亜稀斗は悪戯に笑った。
「「今日の放課後残って纏めよう」」
息がピッタリ揃った2人は同時に顔を見合わせて笑った。
「嫌やわ」
「なにが?」
珍しく起きてる芥川は忍足の溜息を見ていた。
「この噂何時になったらなくなるんねん」
「さぁ?…侑ちゃん人気あるから大変だと思うよ」
無責任にそう言うと芥川は眠りについた。
「はぁ…、ジローはええなぁ……」
頬杖を付き、芥川を見れば気持ち良さそうな寝顔。
「えっとぉ、今集まってる情報は…」
放課後、約束通りと亜稀斗は残っていた。
勿論、忍足の好きな人を探る為に。
紙とペンを持って1つの机に向かい合い座る。
「1度も話した事がないでしょ〜」
噂好きな亜稀斗が言う情報をが紙に書いて行く。
「クラスの中にいるでしょ〜」
「好きな子の事気にして良く見てるでしょ〜」
「彼氏はいない子で〜」
「んで、クラスの中の可愛い感じの子ッ!!」
一通り噂話を紙に書き上げ、クラスメイトの名前を書き出す。
一人ずつ彼氏がいる、いないに分ける。
そして最後に、可愛い感じか否かを分ける。
「此は好みの問題だからなぁ…」
大分人数が絞られ、波に乗った亜稀斗が最後にとっておきの情報を出した。
「忍足君は美人が好きだった」
有名な話で其れはも知っている事だ。
「って事は、前に忍足君が一緒にいた子とは別のタイプを探せば良い!!」
確かに8人程度の人数なら可能な話だ。
其の8人中4人はギャル系な顔だ。
「忍足君はギャル系と一緒にいた事有った」
「後、お姉系も」
亜稀斗の何処から出て来るのか解らない情報でどんどん絞られて行く。
「可愛い感じの子で残ったのは、2人かぁ」
実際に残ったのは3人だが、1人は彼氏持ちだった。
「と江住さんか…」
「江住さんじゃない?」
の科白を聞いて亜稀斗はを睨む。
「何言ってんの。江住さんに忍足君取られて良いの?!」
亜稀斗はの気持ちに気付いていた。
普段はあまり好きな人の話はしないが、が時々忍足を見ている事。
「亜稀斗さんが気付いてないとでも思った?」
「あたし忍足君好きなのかなぁ…?」
が亜稀斗にも言わなかったのは自身も解らなかったからだ。
其れを知っての亜稀斗の質問。
「江住さんも忍足君の事好きらしいよ」
其の一言を聞いて、は眼を見開いた。
「ちゃん、忍足君の事好き?」
小さく尋ねるとは頷いた。
髪をいじりながら恥ずかしそうな顔をした。
「良かったね、忍足君」
廊下に向かって喋る亜稀斗に驚き、亜稀斗の視線の先を見れば忍足がいた。
全て話を聞いていたらしい。
「忍足君、今度ハーゲンダッツ奢ってねv」
亜稀斗は帰り支度をして教室を出ようとする。
驚いた侭のに手を振って笑った。
「此からデートなのv送って貰ってね」
一方的に喋り、さっさと帰ってしまった。
残されたと忍足。
呆然としていて話を飲み込めていない様だ。
廊下にいた忍足は教室に入り、何も喋らない。
ただ静かに立っている。
「……なぁ」
其れでも最初に沈黙を破ったのは忍足だった。
「ぇ?はいッ」
整理して考えても何故亜稀斗は忍足がいる事を知っていたのか。
何故亜稀斗は知りながらも自分が忍足を好きなのかと問い掛けたのかが解らない。
忍足が何故此処にいるのか理解出来ない。
「俺、クラスに好きな子おんねん」
先程からと亜稀斗が調べていたのだから知っている内容だ。
「でな、其の子ん事めっちゃ好きやねん」
そんな事をポツリポツリと話す。
忍足の顔を見て戸惑う。
「可愛い子でな」
「あの、あたしが聞いて良いの?」
やっと口を開いたに忍足は答えない。
「其の子と初めて話してな、ええ子やったわ」
楽しそうな忍足の横顔には見取れていた。
その横顔は何時もファンの子に見せる様な顔じゃなくて、本当に綺麗な横顔だった。
「…本人に言ってあげた方が喜ぶと思うよ」
あんな顔をされては、がどうこう言える筈がない。
「最後まで聞いてぇな」
の顔を少しだけ見て又忍足は窓を見てしまう。
は黙って忍足の話を聞いた。
「思った通りの子でな」
そんな忍足の顔を見ては悲しそうな顔をした。
それに気付いた忍足がの顔を覗き込む。
「どないしたん?」
「……忍足君、あたしの名前知ってたんだ」
吃驚して眼を見開き忍足の顔を見上げた。
「そりゃ、2年から一緒やったやろ」
の方を向いて笑った。
「どッ、どないしたん!?」
忍足が驚いて慌てる。
は、何の前触れもなく大粒の涙を流していた。
「ごめん。なんか…」
「ほれ」
差し出されたタオルを躊躇いながら受け取った。
「…ありがとう」
「なぁ…、泣かんといて」
タオルで顔を覆うを見ながら、眉を潜めた。
「ホントごめん。大丈夫だから」
必死に涙を堪えるを見てられなくなり、忍足はを抱き締めた。
「ッ、忍足君?」
「泣かんといて、」
頭を撫でて力強く抱き締めた。
「、好きやで」
忍足は耳元で静かに呟いた。
「嘘…」
「嘘やないて、全部の事やんか」
クラスメイトで話した事がなくて彼氏のいない可愛い子…。
それがに当てはまる。
「初めて話して、一緒におって益々好きんなった」
「…」
は忍足の言葉に着いて行くのに必死だ。
「なぁ、俺と付き合わん?」
忍足は亜稀斗に頼んでとの中を取り持って貰ったらしい。
キツク抱き締めた腕を緩め、と目線を合わせる。
「忍足君が…好き」
「せやったらええ?」
初めて話して、初めて名前を呼び合って、初めてキスをした。
それから2人は暫くの間教室で話していた。
隣に座って手を握りながら。
尽きる事のない会話を互いに楽しんで…。
きゃー!
久しぶりに浮かんだ小説がテニプリ。
しかも甘系。
珍しいわ…。
でも学園物って何となくだけど、最遊記じゃ書き難くて。
学園物は楽しいですねぇ…甘くて。
でも落ちが在り来りにッ!!
精進します。
感想下さい♪